長く安全に運転を続けるために!早めの対策で認知症予防
高齢者にとって、認知症は誰でもなり得る身近な病気です。
厚生労働省の推計では、2025年には高齢者の約5人に1人は認知症になると予測されています。
認知症は発症すると現代の医学では完治が見込めません。
しかし、早めに予防対策に取り組めば、発症のリスクを減らすことが期待できます。
これからも安全に運転を楽しむためにも、認知症のリスクを知り、積極的に予防対策を始めましょう。
毎日をぼんやり過ごしていると認知症になりやすい
歳をとると、誰でももの忘れをしやすくなります。
これは脳の神経細胞が減って働きが衰えてくるからで、自然な老化現象です。
認知症の場合は、老化に加えて、ほかの原因で脳の神経細胞が大量に減り、記憶力や判断力などが低下した状態がずっと続きます。
それが日常生活に支障をきたすまで悪化すると、認知症と診断されます。脳は、適度に使い続けて刺激を与えることで活性化します。
変化が乏しくぼんやりした毎日を過ごしていると、脳の老化が進んで認知症になりやすくなります。
認知症は、生活習慣とも関連し、糖尿病や高血圧症などの生活習慣病や、運動不足、社会参加の不足などが主なリスク因子として指摘されています。
近年は、こうした認知症のリスク因子が、科学的に裏付けられるようになりました。
それが図表1です。
資料:Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commissionをもとに作成
2020年にイギリスで発表された有名な研究で、認知症のリスク因子を数値で示したものです。
色分けはリスクの高まる年代を示し、高齢期だけでなく、若年期や中年期にもリスクが分散しています。
数値を合計すると40%になり、12のリスク因子をすべて解消できれば、認知症の発症を40%まで予防することが期待できます。
認知症を予防するために大事な事
予防は「運動」「コミュニケーション」「知的活動」をバランスよく
図表1の中で、もっとも大きなリスク因子は①の難聴です。
耳が遠くなることで脳に障害が起きるわけではなく、会話がうまくできないことで、周囲とのコミュニケーションや社会参加の機会が減り、脳への刺激が減って認知症になりやすくなると考えられます。
聴力は歳をとると自然に衰えますが、中年期からその傾向がある人は特に注意が必要です。
一度衰えた聴力は回復しないため、会話が聞こえにくくなった人は、早めに補聴器の導入を検討してください。
リスク因子のうち、②教育歴や⑨の大気汚染については、日本で生活する人はあまり心配する必要はありません。
そのほかのリスク因子は、ほとんどが生活習慣と関連します。
これらに対しては、認知症予防の3本柱である「運動」「コミュニケーション」「知的活動」を、毎日バランスよく実践することが有効です(図表2)。
認知症予防のポイントは、頭をよく働かすと同時に、体をよく動かすことです。
基礎体力や筋力が減ると、外出の機会が減り、認知機能も低下しやすくなります。
特に高齢者は、足腰の筋力や柔軟性の低下を防ぎ、外出に不自由のない体力を維持することが大切です。
コロナ禍でも可能な限り活動や交友の範囲を広げて12のリスク因子のほかに、現在はさらに大きなリスク因子があると言えます。
それは、コロナ禍での自粛生活です。新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威をふるい、私たちは長い自粛生活を余儀なくされてきました。
これによって、認知症予防に大切な、他人と会って話をしたり、外出したりする機会が極端に減りました。
感染リスクを避けて自宅に閉じこもっていると、脳への刺激が減り、活動意欲が低下して認知症になりやすくなります。
実際に医療や介護の現場でも、患者さんの症状が悪化した報告がなされています。
そのため、ここ数年で認知症の人がさらに多くなるのではなないかと危惧しています。
新型コロナウイルスが今後どのような流行を見せるか予測しきれませんが、認知症を予防するためには、感染予防に十分配慮したうえで、可能な限り活動や交友の範囲を広げ、活力のある毎日を取り戻してください。