自動車教習所の今昔物語

"今の自分"を知ることは「安全運転」を継けるための第一歩

私が教習所指導員になった35年程前は、自動車教習所のお客様と言えば、18歳~20歳位の若者ばかりでした。

今は当時と比べると、免許を取得しようとする方からプロドライバーまで、年齢も性別も国籍もじつに様々、多種多様な方が集う場所になっています。

とりわけ70歳以上の免許更新前に義務付けられている「高齢者講習」を受講する方の姿を毎日みかけるようなりました。

そして、昔も今も変わらないもの、それは“緊張感”です。

毎日運転しているベテランドライバーでも教習所での講習となると、石膏の彫刻みたいに白く固い顔つきで緊張しているのが伝わってきます。

特に75歳以上の方が受講する「認知機能検査」では、まるで数十年ぶりに入学試験でも受けているような雰囲気に包まれ、教室の中はいつも糸をピンと張ったような緊張感が漂っています。

次回の「高齢者講習」で皆さんがいつもの力が出せるように、お伝えしたいポイントを書いてみたいと思います。

高齢者講習について

認知機能検査のポイント

警察庁ホームページや書籍などで広く内容紹介されているので事前にチェックすることをお薦めします。

検査項目は2つ、「手がかり再生」(記憶力)「日時見当識」(状況確認)です。

手がかり再生は、イラストを記憶して介入問題を実施した後に、何のイラストがあったのか思い出して回答する検査です。

1つのパターンで16個のイラストを覚えます。これがA・B・C・Dの4パターンあり、その中の1つが出題されます。

パターンA

パターンB

パターンC

パターンD

認知機能検査のアドバイス

「認知機能検査」を受ける前にすべてのイラストを暗記してくるという勉強家が多いのですが、すべてのパターンを覚えるのは意外と落とし穴があります。

本番の検査で、必要なイラストだけではなく、前日に覚えていたほかのイラストもすべて記憶の中に残っているので、他パターンのイラストを誤って回答してしまっている方をよく見かけます。

ましてや、書籍によってはすべてのパターンが載っていないものも散見されますので要注意です。

前日は、猛勉強するのではなく体調を整えておくことを心がけましょう。

これから取得するお友達にも教えてあげてください。

運転講習について思うこと

「自分自身の運転は安全だ!と思う人は手を挙げてください。」地域の高齢ドライバーを対象とした交通安全教室で、長年私はこの質問を投げかけてきました。

毎回「自分の運転は安全だ!」と回答する方がほとんどという結果となります。

そもそも自ら交通安全教室などというものに参加しようとしている方たちなので、安全意識が高いと思います。

具体的にどのような安全運転を心掛けているのか訊ねると、「周りの安全確認はしっかりしている」「普段からスピードは出さない。」「一時停止の場所ではきっちり止まっている。」等々、これまた一斉に普段から気を付けている運転行動について語っています。

ところが、実際に教習所内コースで運転チェックをしてみると、気持ちと運転行動のギャップが続出していて、特に多いのは「一時停止場所で停止している」つもりで停止できていないという現象です。

それどころか止まれの標識に気づいていない方も多くみられます。

安全運転のアドバイス

普段から運転中に、積極的に「一時停止標識」を探してみてください。道路標識は運転している目線より高い位置に設置されています。

年齢とともに背筋をまっすぐに伸ばす運転姿勢を保つことがしんどくなっていませんか?

背筋が曲がっているとハンドルを握っている時の視野も狭めてしまいます。

運転の前にはストレッチや「運転前体操」などをしてからの運転を心がけてください。

最後に

高齢者講習は「運転適性検査(視力や視野の検査)」「実車指導」「講義」を受けて終了となります。

「修了書」を受け取る頃には、教室の中の緊張感は吹き飛んでホッとした和やかな空気に包まれています。

「これからも安全運転できるように気を付けるわ!」「今日は色々と勉強になったよ、ありがとう」等と嬉しい言葉を私たちにかけながらニコニコとした笑顔で教習所をあとにしています。

その後ろ姿を見送りながら「これからも安全に!健康に!」といつも願いお見送りをしています。

私も他人ごとでではありません。

人生100歳時代、運転フレイルに陥らないようにいつまでも安全で健康に暮らしていきたいとおもっています。